竹田陽一先生 顧客対応維持戦略 前半

この動画は、
ランチェスター経営の竹田陽一先生が
2015年5月27日に行った
セミナーの映像(前半部分)です。

栢野克己氏の師匠としても知られる竹田先生が、
中小企業の経営において
極めて重要な
「顧客維持(顧客対応維持戦略)」について、
統計データや身近な例え、
鋭い経営理論を交えて
軽妙に語っています。

1. 統計から見る「中小企業の規模」と間違いだらけの経営指導

確かな企業数統計

国税庁の税務申告ベースの統計が
最も信頼性が高く、
全国には約271万9,000社が存在します。

地域別の県民総生産では、
15年ほど前から
神奈川県が大阪府を抜いて
第2位になっています。

日本の9割は「20人以下」の超小規模企業

日本の企業規模の内訳は、
「従業員10人以下が80%」
「20人以下が約90%」
「30人以下が95%」です。

そのため、
地方の勉強会に
100人以上の規模の経営者が来ることは稀であり、
地方での勉強会は
10人〜30人規模の視点に合わせるのが
最も効果的です。

「大手向け理論」の悪影響

東京の有名コンサルタントは
大企業(数千〜1万人規模)向けの
「事業部制」
「分社経営」
などのノウハウを話したがりますが、
これを従業員50人未満の中小企業がマネして
子会社をたくさん作るような経営は、
バカバカしく何の意味もありません。

経営規模に合わせた組織作りこそが
何よりも重要です。

2. 資本型(資金を使う)産業と知識型(資金を使わない)産業

マルクスの資本論に則り、
価値(粗利益)は
「資本(資金)の力」と
「人間の力」
(社長の戦略力×従業員の戦術力×仕事時間)
によって生み出されると解説しています。

資本型産業(製造業・土木など)

ボルト・ナットや金型製造、生コン製造、
パチンコ産業、建売住宅、貸ビル業などは
多額の設備投資や資金力を必要とし、
1人当たりの粗利益が
900万〜1,000万円以上に上ることもあります。

知識型・サービス型産業(飲食・小売・コンサル・ITなど)

一方で、
中小企業の約7割(新規ビジネスでは8割)は、
資金をほとんど使わず
「人の知識や技術」
(あるいは社長の口八丁)
が中心となるビジネスです。

「資金を使わない産業」ほど社長が勉強しない

皮肉なことに、
資金力を武器にできない
サービス・小売業の
2代目・3代目の社長ほど
経営の勉強をしない傾向にあります。

資金力の無さをカバーするためには、
「社長自身が
他人の何倍も経営戦略を勉強し、
従業員の腕を上げ、
労働時間を投入する」
以外に
価値(粗利益)を高める方法はありません。

3. 「利益の公式」と社長の役割

利益を決める公式:

経常利益 = 粗利益 – 経費

経常利益への影響ウェートは、
「粗利益を多くすること」が67%、
「経費を節約すること」が33%の割合です。

だからこそ、
社長は
「1人当たりの粗利益をどう増やすか」
(いかにお客を作るか)という
67%の最重要部分(顧客・営業)に
時間を使うべきです。

社長がトナー代やコピー用紙の安さを
細かく気にして
口を出すような会社はうまくいきません。

経費節約は経理や事務に任せ、
社長はお客を作るために外を見るべきです。

4. 訪問営業における時間配分と「本当のお金になる時間」

竹田先生は、
一般的な訪問型営業マンの
1日の仕事時間は
以下の3つに分かれると分析しています。

① 移動時間(平均45%)

社長が地域戦略を考えず、
広いエリアを営業マンに回らせていると、
この移動時間が55%以上に達し、
ただの「車の運転手」になってしまいます。

② 社内業務時間(平均30%)

日報作成や会議、
そして受注できる見込みの薄い
相見積もりの作成作業などに
忙殺されている時間です。

③ 面談・商談時間(平均25%)

お財布や金庫の鍵を握る
「決定権者」と直接会って
コミュニケーションを取る、
「唯一、実際にお金(粗利益)を生み出している時間」です。

利益が「2.5倍」に跳ね上がる数理トリック

全体の25%の面談時間のうち、
17%相当分は
実質的な営業経費の回収に消えており、
実質的な純利益(経常利益)の源泉となっているのは、
わずか「8%」分しかありません。

ここで、
地域戦略を徹底して
「特定の狭いエリアで顧客を密集化」させ、
移動時間を45%から35%に減らしたとします。

浮いた10%の時間を
面談時間(25% → 35%)に充てた場合:

面談時間自体は、
25%から35%へ
「1.4倍」に増えるだけですが、
本当の利益(純利益)の源泉は、
8%から18%(+10%)へと増え、
「2.25倍(約2.5倍)」
に跳ね上がります。

移動時間をいかに削り、
顧客と向き合う直接時間を
いかに増やすかが、
会社の生産性を劇的に変える
最大のカギとなります。

5. 内勤スタッフを「第二営業部」に化けさせる(経理合理化のノウハウ)

営業マンだけでなく、
お茶くみや経理などの内勤者を含めた
「会社全体の総労働時間」のうち、
顧客活動に直接繋がっている時間は
ごくわずか(大抵は15%以下)です。

内勤者を教育し、
1日450分の勤務時間のうち
わずか「35分〜40分(約8%)」だけでも、
ハガキを書く、
メールを送る、
丁寧な電話応対をするなどの
「顧客対応時間」にシフトさせることで、
営業マンを1人増やすのと
同等の爆発的な営業力を生み出せます。

そのための
「内勤のムダ時間削減(経理の合理化)」
の具体例として、
竹田先生は以下の実践的なアドバイスを送っています。

5,000円以下の領収書はすべて「雑費」処理する

真面目な経理担当者ほど、
大企業のやり方をマネて
何百もある細かな勘定科目に仕分けようと、
1枚数円〜数百円の領収書に
10分も悩んで時間をムダにします。

税法上、
5,000円以下の不明瞭な経費は
すべて「雑費」として
一括処理して構わないため、
機械的に雑費処理させて
時間を生み出します。

営業マンに「コーポレートカード」を持たせる

ある年商25億円の優れた中小企業では、
経理がわずか2人しかいません。

営業マン15人分の出張旅費を
(新幹線やタクシーの細かな清算)
いちいち清算書で細かくチェックする時間が
最も非効率であるため、
全員にクレジットカードを持たせ、
毎月の明細合計を
そのまま1行で入力・処理することで、
劇的な時間削減を達成しています。

6. 最も難しい「新規開拓」と「顧客維持」の極意

ビジネスにおいて最も難易度が高いのは
「新しい顧客(見込み客)を、
いかに安価なコストで見つけ出し、契約を取るか」
です。

一度購入してくれた顧客に
メッセージ(ハガキ・電話など)を送り続けて
忘れられないようにし、
良好な人間関係を維持することが、
最も簡単で最も利益を生む効率的な経営戦略です。

世間には、
一度売った後の
「記録方法(簿記や会計)」
を教える学校は無数にありますが、
「新しい顧客を作り、
その顧客を維持する方法(顧客維持)」
を教えてくれる学校や大学(経営学部など)は
ひとつも存在しないため、
経営者自らがこの重要性を学び、
社内で実践していく必要があります。